Kobayashi Law Office


                         

★ コラム

2021.01.07
~対案の無い批判、責任の無い非難~

 2020年のニュースを振り返ると、新型コロナウィルスに関する報道が圧倒的に多かったように思います。また、個人的には、著名人に対するインターネット上での誹謗中傷、さらには、これに端を発すると思われる自殺の問題が印象に残っています。
 このようなニュースを見聞きして思うのは、「対案の無い批判」や「責任の無い批判」が世の中にあふれていることへの危機感、そして、怖さです。
 例えば、コロナ関連でいえば、当初は安倍政権が舵を取り、停泊していた船舶への対処、入国制限、緊急事態宣言の発令、各種給付金制度等、前例の無い事態に対してその都度(これに対する評価は別として)対策を取ってきたように感じています。また、菅政権に交替した後も、年末にGOTO事業を停止するなどの政策判断が取られています。
 もちろん、国政においてはコロナ対策のみしておけば良いというものではなく、経済、外交問題、社会福祉政策、教育、東京オリンピック開催の是非、地方自治体との関係等、あらゆることを総合的に調整しながら行うべきであって、「これを実施すれば全国民が必ず幸せになる」といった魔法のような政策を期待することは非現実的です。そうだとすると、時の政権によるコロナ対策に対して批判や反対が出ることは当然であり、批判する者は、ただ否定するのではなく、具体的な対案を提示し、前向きに国のあり方について議論するべきであり、これが本来あるべき政治の姿だと思います。
 ところが、コロナ対策に関する報道やインターネット上の声を見聞きするに、一方的な批判が多いように感じます。どのような政策を採用しても、その政策だけで全国民を幸せにすることは不可能なのですから、批判は簡単です。しかし、批判者が反対するその政策が無くなれば全国民が幸せになるのでしょうか。政権を批判して総理大臣もしくは与党が代われば全国民が幸せになるのでしょうか。政治家の先生方や報道機関は、「こうすればもっと良くなる。」、「こうすれば、この政策で幸せになれない人でも少しは助かる。」など、対案を持って議論する姿勢をもっと重視して欲しいと思います。それが本来の民主主義と思われるからです。
 インターネット上の誹謗中傷問題でも同様の現象が起こっているように思います。ある著名人の言動が不適切とみれば、その言動を一方的かつ徹底的に非難し、あたかもそれが国民の総意であるかのように拡大し、結果として対象者のみならず家族等の人権を侵害している、といった構図が世の中に蔓延しているように思います。インターネットの利便性は大切ですが、少数派の意見に賛同している、インターネットが不得手など、様々な事情から、大きな声を上げることができない人が一定数存在することは事実です。そのような人々が一方的に非難されることの無いよう、誹謗中傷者に対して発言の責任を持たせる方策(例えば、発信者情報開示を合理的範囲で拡大・容易化するなど)が必要だと考えます。
 これから、コロナ禍の影響でますますリモート化、WEB化が進む世の中になると思われます。そのような新しい時代に私たちがインターネットの利便性を最大限享受するためには、対案の無い批判、責任の無い非難をできる限り少なくして、前向きに物事を進める努力が大切だと感じます。
 私自身、インターネット等で一方的な批判を浴びることに対して強い恐怖心を持っており、今でも、SNSで自分のプライベートを紹介することに対しては極めて慎重に考えています。そんな私でも、気軽にSNSを楽しむことができる世の中になって欲しいと願っています。
2019.10.02
~12年を振り返る~

 2007年9月に弁護士として登録し、本年9月で丸12年となり、弁護士生活13年目に入ります。そして、私自身、本年9月で40歳となり、そういった意味でも節目の月となりました。これを機に、これまで12年間の弁護士生活を振り返ってみようと思います。
 最初の4年間(1~4年目)は、仕事のことを第一に考えて過ごした気がします。私は、入所した事務所に恵まれました。入所した事務所は、新人弁護士へはいろいろな種類の事件を振って経験を積んでもらう、という方針があり、私にとっては任された仕事が全て新鮮でした。ときには、必要以上に時間をかけて事件処理が遅くなったこともありましたが、私なりに一生懸命取り組みました。私は、元来飽き性で、一つのことをコツコツ続けることがあまり得意ではなく、大学受験時代でも、司法試験受験時代でも、根を詰め過ぎると体調を崩してしまうような人間でしたが、弁護士の仕事であれば時間を忘れて取り組むことができると実感しました。
 次の4年間(5~8年目)は、悩みが多くなった4年間でした。入所した事務所で任される仕事は質、量ともに増えていき、自分自身も弁護士としての成長を感じていました。一方、この頃、先輩や知人の勧めもあり、同業者の集まりだけでなく、異業種の方と交流する機会を多く持つようになりました。それまでは、弁護士として事務所から与えられた仕事に没頭することで時間が過ぎていましたが、異業種の方と交流し、世間の様々な常識に接する機会を通じて、自分は1人の社会人として世の中の役に立っているのだろうか、社会のために自分ができることはもっとあるのではないだろうか、などと思うようになりました。結果として、当時の事務所の先生方にわがままを言い、ご了解を得て独立させていただき、弊所を開設するに至りました。
 その次の4年間(9~12年目)は、新たなチャレンジとなった4年間でした。独立したことで、仕事は全て私という個人の弁護士に対してご依頼いただく仕事になりました。そのため、これまで以上に責任感を持ち、そして解決に向けた自分なりのビジョンを持って、一つ一つの仕事に正面から取り組むようになったと実感しています。また、小さいながらも一つの事業所の長として、社会における様々な義務や責任を一つずつ勉強しています。まだまだ足りないことも多いですが、漠然とではあるものの、私だからこそできることも増えてきたと実感しています。
 その上で、これからの4年間は、ご依頼いただける仕事を通じて、私という弁護士だからこそできることは何かを追求し続けたいと思います。また、そのような私に共感を持ってくれる方が見つかれば、事務所を大きくしていくきっかけにもしたいと思います。
 これからもよろしくお願い申し上げます。