~2020年4月1日から改正民法(財産法)が適用されます~
民法は、所有権、契約、損害賠償、時効といった財産面に関するルールを決めている法律で、日常の買い物から突発的な交通事故、会社同士の取引に至るまで、私人間で権利や義務を発生させることになるほとんどの行為の基本的なルールを定めるものです。法律の世界では、憲法、刑法と並び基本三法と称され、法学を学ぶ者にとっては最初に勉強する法律です。弁護士業務において最も使用頻度の高い法律といえます。
そのような民法(財産編)が最近改正され、2020年4月1日より適用されることになりました。民法は、もともと国をあげて近代化を目指していた明治時代に作られた法律で(1896年制定)、現代まで約120年間、大きな改正もなく維持されてきた法律でした。しかし、現代の取引慣習とかけ離れている部分や現代の価値観と合わない部分が目立つようになり、今回の改正と至りました。
例えば、保証人を付けることのできる条件について、保証人保護の要請から大きくルールが変わります。現行民法では、自分の持っている建物を賃借人に貸し、賃借人の親族を保証人にしている場面において、賃借人が賃料を払わなければ、保証人に対して損害の全額を請求することが可能でした。しかし、これを無制限に認めると、保証人が予想を超える多額の支払いを強いられてしまう、という問題が指摘されていました。そこで、改正民法では、このような場合、「~円を限度で責任を負う」という定め(根保証といいます)がなければ保証としての効力を生じないこととされました(改正民法465条の2)。また、事業のために負担した借入金についての個人保証は、一定の例外を除き、公正証書によらなければ効力を生じないことになりました(改正民法465条の6以下)。したがいまして、例えば、みなさまの中に保証人付賃貸借契約を結んでいる取引先があれば、2020年4月を境に、賃貸借契約書の文言の見直しをする必要性があるケースが予想されますし、また、個人保証を付けて事業資金を借りようとする場合は、その保証人に公正証書を作成してもらわなければなりません。
以上はあくまで一例です。なお、新聞でもよく見かける成年の年齢が18歳に引き下げられる民法改正ですが、こちらは、財産法とは異なり、2022年4月1日より改正法が施行されます。
今回の民法改正は、何度かに分けて、多岐にわたる分野についてなされますので、本誌だけで改正内容の全てを紹介することは困難ですが、今後もいろいろな形でみなさまにご紹介させていただきたいと思います。